歯の再植(さいしょく)について知ってほしい7つのこと。

歯の再植

Q:再植ってどういうこと?

 

A:泉崎ファミリー歯科院長

はい。再植とは

定義

 

定義:何らかの理由で歯槽窩から脱落した歯、または抜去された歯をもとの歯槽窩に

挿入して固定し、歯の機能を少しでも長く営ませようとすること。

です。

 

具体例(適応から手術方法まで)

 

分かりやすい例で説明しますね。

 

根尖病巣(歯の根っこに膿ができたもの)などで根管治療(根っこの消毒)をしても、

ある程度の病巣の大きさになると、成功率が悪いといわれています。

病巣の大きさが歯冠の大きさ以上になると、根管治療をしても根っこの透過像(レントゲンで確認できる膿の範囲)が完治するのは低いです。

また、一度根管治療をやり直したのに再発した歯という例もあります。

そういった症例の多くは、歯の根っこの先が複雑な形をしていて、通常の根管治療では

治らない場合が多いです。(初回の根幹治療の成功率が90%以上なのに対し、2回目以降の

根幹治療の成功率は60~70%と極端に低下します。このことは、歯の根っこの形がシンプルなものは問題なく治る場合が多いが、再発して2度目、3度目の根管治療になる歯というのは、歯の根っこの形が複雑で完全に消毒ができていないということを指します)

 

 

そこで、歯を抜歯して、

お口の外で歯の根っこの下から3㎜ほどを切断して、きれいに消毒してお薬で封鎖します。

 

それを、短時間でもとの抜いた歯槽窩(歯を抜いた穴)に戻します。

その際に、根尖病巣は掻把(病変を除去)し、人工の骨材などを充てんします。

骨が溶けているところは、感染源がなくなるとまた骨は修復されますが、そのスピードは数か月~数年とゆっくりです。

そのスピードを補うために人工の骨剤を入れるわけです。

 

治療後どれくらい固定するの?

 

戻す際に、左右の歯にワイヤーを貼って動かないように固定します。

定着するまで、3か月固定します。

 

その後は、

再植した歯はなるべく根っこにダメージを与えないような被せ物にする必要があります

 

被せ物はどうするの?

当院では、被せ物は

HC(硬質レジン前装冠)を勧めています。

金属の裏打ちに、フルベイクで硬質レジンを持っています。

レジンは強化プラスチックなので、かみ合わせ面が自然にすり減ってくれます。

 

保険の金属(金銀パラジウム合金)だと硬すぎる(歯の硬さの3倍以上!)のため、歯の根っこにダメージを与えます。

メタルボンドなどのセラミックだと、硬さは歯の硬さと同じですが、セラミックの性質上、すりへるというよりチッピング(割れる)ため、比較すると、根っこを守るためには、(根っこが弱い歯には)HCを勧めています

 

手術の値段はいくら?保険は効くの?

 

料金は

骨材代3万

被せ物代7万

手術代2万

 

合計で12万円になります。

 

制約はありますが、手術代に保険も使えることもあるので相談してくださいね。

(その場合、混合診療になるので骨材は使いません)

再植の予後

ただし歯がきれいに抜けないと歯根膜が剥がれてしまいますので、大きく拡がった形の歯には適用されません。また残っている歯が薄く、抜く時に割れてしまったら、もちろん使えません。
また、うまく行ったようでも、後で歯と骨が癒着してしまったり、歯根吸収がおきると、長くは使えない可能性もあり、楽観はできません。
ですから再植術は、絶対に成功するという確実性のある治療ではなく、「ひょっとしたらうまくいくかもしれない」くらいの気持ちで行うのが良いでしょう。
しかしこのように、インプラントにしない選択肢がまだあることを覚えておいて欲しいと思います。